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Report: 増上寺の夕謹行の体験と有馬理恵氏による講演会に行ってきました
6月5日、増上寺(東京港区)で夕謹行の体験と有馬理恵氏による講演会「増上寺の夕勤行体験と講演会」が行われましたので参加してきました。増上寺は三縁山広度院増上寺(さんえんざんこうどいんぞうじょうじ)が正式名称で、明徳四年(1393年)に浄土宗第八祖酉誉聖聰上人によって開かれたという浄土宗鎮西派の七大本山の一つです。
JR浜松町駅から西へ(東京タワー方向)歩くと駅名にもなっている『大門』が道路上にあります。大門から更にまっすぐ進むと正面に『三解脱門』があり、そこから境内を進み正面の大きな階段を上ると今回の会場となる『大殿(だいでん)』があります。
浜松町側にある大門。自動車も通行できます。
大きな三解脱門。ここから境内です。
境内図を見ると奥行きがあることがわかります。
聖観世音菩薩像。
仏足石。
左から魚供養之碑、ブッシュ槙、詠唱発祥の地の碑。
徳川家ゆかりの水盤舎。
今回の会場となる大殿(本堂・三縁ホール)。東京タワーとの組み合わせもいいですね。
本催事の主催は公益財団法人全日本仏教会社会人権部です。予定表に記載されていたタイムスケジュールは以下の通り。
17:00~ 大殿内陣にて夕謹行体験
17:30~ 休憩と移動
18:00~ 大殿3階仏間にて有馬理恵氏の講演とひとり芝居
「いのちの豊かさを求めて」~釈迦内棺唄の講演に携わって~
19:30 終了予定
受付開始は16:30。参加者はFAXにて事前に申込みを済ませており、受付で氏名を告げると夕謹行・講演会のパンフレットと劇団希望舞台のチラシ、アンケート用紙、参加者証、靴を入れるビニール袋を渡され、スタッフが大殿の内陣へ案内します。なお、夕勤行および講演会は撮影禁止とされていました(今回、筆者は一般として参加しています)。
大殿に入ると、手前に一般参拝者のための椅子席があり、夕勤行体験参加者の座る内陣では畳の上に赤い毛氈が3~4列敷かれてそこを座席としてありました。正面は本尊阿弥陀如来像で、先の毛氈との間は僧侶が座る場所となっています。なお、内陣両サイドはそれぞれ、高祖善導大師像と宗祖法然上人像が祀られています。
夕勤行開始を待つあいだ、参加者の目前で数人の僧侶が勤行の準備を開始。一方、左サイドの仏像前では、一人の僧侶と一般の方々が読経を始めました。
スタッフが読経の間でも足を崩して良いと告げただけで、夕勤行についての解説などは特にありませんでした。事前申込みの参加定員は100名となっていましたが、座席はかなり余裕があったように思います。
夕勤行開始の5分前頃でしょうか、太鼓の音が響き左脇檀の読経か終了、間もなく内陣の照明が明るくなり、17時(夕謹行開始時刻)になると、仏壇の裏手から鐘と鈴の音が聞こえ、外からは梵鐘の音が響いてきました。すると仏壇右手から10名ほどの僧侶が入場し、読経が始まりました。
受付で手渡されたパンフレットには「目を閉じて読経に耳を傾けることで仏に遭える喜びを感じ、身も心も清らかになり、仏を感じることで謙虚な心が芽生え、苦悩を遠ざけてくれる」と書かれています。
お経や夕勤行について会場では特に説明はなく、日常行われている夕勤行の様子を見ながら、大殿の中に響き渡る読経の声を聞くというものでした。
30分程して読経が終わると僧侶が仏壇左手へ退場。スタッフが引き続き予定されている講演会が90分通しで行われること、トイレが階下にあること、講演会の会場が3階の仏間であることを案内し、場所の移動と30分間の休憩に入りました。
3階の仏間は150畳ほどの広さで、畳の上に細長い赤い絨毯が横に4~5列敷かれています。後方の壁際には椅子が一列に並べられ、満席です。講演会の参加者は60名から70名程度、40代~50代を中心に広い年代で男女比は半々のようでした。
正面には金色の阿弥陀如来像が明るい照明で照らされていましたが、部屋全体は特に特徴のない大広間でした。スクリーンと小さな演台も用意されています。
予定通りの18時から講演会が始まりました。主催者である全日本仏教会社会人権部の司会者がマイクを持ち5分程度、参加者への挨拶と講演の説明などがありました。社会人権部主催であり、社会の中の差別や人々の生きる権利について考える講演であることを説明し、有馬理恵氏と劇団希望舞台を紹介しました。
有馬理恵氏は俳優座に所属し、希望舞台の劇団員として「釈迦内棺唄」では主役のふじ子を演じています。高校時代に浅利香津代主演の「釈迦内棺唄」を見て衝撃を受けたのが演劇の世界に入るきっかけだったそうです。
そして『アジサイのような爽やかな衣装』と紹介された有馬理恵氏が登場。劇団希望舞台の活動紹介と「釈迦内棺唄」についての説明のあと、米倉斉加年氏演出による第1回公演の一部を上映しました。本来の舞台は8名の人物が登場してそれぞれの役者さんが演じますが、今回は短縮してひとり芝居にしたものとのこと。
「釈迦内棺唄」は水上勉原作の戯曲で、秋田の鉱山で起きた「花岡事件」を題材とし、死体焼き場を家業とする架空の家族の物語です。家業のために差別される家族と人種差別の問題の中で、いのちを尊ぶ心を失わずに生きる家族の姿が描かれています。
有馬氏のひとり芝居は20分ほどのものでした。
芝居のあと有馬氏は、部落問題や戦犯の問題、原発事故による風評問題についても言及し、「釈迦内棺唄」の公演を続けていく意義などを話しました。
様々な差別によって弱い立場の人や子供たちに向けられたたった一言が人の心に深い「さびしさ」を生じさせてしまうことがある。人を差別するという問題は言葉を発した個人の反省によって解決されるものではなく、その背後には社会環境の大きな問題があることに気付いてほしい。人の心の奥に「さびしさ」を植えつけてしまう社会に疑問を投げかけ、芝居を見る人の心にある様々な「さびしさ」を解き放ちたい。そういう思いで芝居を演じ続けているそうです。
最後に劇団希望舞台の宣伝を担当している玉井徳子氏の短い挨拶がありました。「釈迦内棺唄」を通して「物やお金とは違う、人として最も大切なものは何なのかを考えてもらいたい」という願いで日本各地での1000回公演達成を目指しているということです。
予定の19時半を少し過ぎて、スタッフの簡単な挨拶で講演会が終了。仏間の外の廊下では有馬氏と玉井氏が参加者と握手、名刺交換などが行われました。
取材:熊谷風実花
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