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Report: 鬼婆に赤ちゃんが泣かされる、広済寺の鬼来迎に行ってきました


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8月16日、千葉県山武郡横芝光町虫生(むしょう)にある広済寺(こうさいじ)で「鬼来迎(きらいごう)」という行事があると知り、行ってきました。

広済寺は建久7年(1196年)に建立されたと伝えられる真言宗智山派の寺院で、本尊は地蔵菩薩です。背後には小高い丘、一方には稲田が広がるのどかな場所に建っています。

広済寺最寄りは町内循環バス「虫生入口」停留所。JR横芝駅から12分です。ここから10分ほど細い道を歩きます。鬼来迎開始までに到着する便は10時台と13時台の2本のみ。徒歩だと約40分、タクシーなら10分ほど。当日は寺院とは別の場所に臨時駐車場がありました。

仁王門。ちょっと写りが悪いですが門も仁王も真っ赤です。
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14時ちょっと前、仁王門を入ると飲料を売る店が一件のみ。
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境内左手、従軍記念碑と永代供養墓。
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本堂では地元の人たちの施餓鬼供養が行われるところでした。
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鬼舞(おにまい)とも呼ばれる鬼来迎は、因果応報、 勧善懲悪を説く日本に現存する唯一の古典的地獄劇で、昭和51年には国の重要無形民俗文化財にも指定されたそうです。内容は全七段で構成されていますが、現在は寺の縁起譚を除く地獄譚四段のみ上演されています。

鬼来迎の由来は広済寺建立の縁起に遡ります。鎌倉時代初期、薩摩の国の禅僧石屋(せきおく)が旅の途中で虫生の辻堂(道端に建っているお堂ですね)に仮の宿を取ったとき、妙西信女という亡者が鬼に責め立てられる夢を見ました。翌日、墓参に訪れた地元の領主、椎名安芸守に聞くと、死んだばかりの娘の法名が妙西信女だというのです。石屋の話で椎名安芸守は自分の悪行を悟りました。そして建久七年夏、娘の菩提を弔うため広西寺(後に広済寺となる)を建立したそうです。広西とは娘の法名にちなんで付けられたとのこと。

鬼来迎に使われる面にはふたつの話が伝わっています。寺が建立された夏、雷雨とともに寺の庭に青・黒・赤・白の鬼面と、祖老母の面が降ってきたという話。もうひとつは、鎌倉の彫刻師、運慶・湛慶・安阿弥の3人が偶然にも石屋と安芸守が卒塔婆をたてて娘の霊を弔う情景を夢に見たのをきっかけに虫生の地を訪ね、大衆に仏教の教えを伝えたいという石屋の願いを聞いて閻魔大王、倶生神(くしょうじん)、祖老母、黒鬼、赤鬼等の面を彫ったという話。彫刻師たちはそれぞれ彫り上げた面をつけ、石屋も他の僧とともに面をつけて鬼に扮し、地獄の呵責と菩薩の大悲を物語る仏教劇を8月16日に演じたのが鬼来迎の始まりといわれています。

本来は境内右手にあった地蔵堂の前で演じられていましたが、昭和46年秋の崖崩れにより地蔵堂が崩壊、その後は同じ場所に仮設舞台を作って演じられるようになったそうです。

本堂左側では虫封じの受付と鬼来迎パンフレットの販売。
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14時前頃、三脚と脚立がずらり。こちらは手持ちで挑みます。
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舞台の前。60席程度の椅子席も満席。炎天下、辛抱強く待ってますね。
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ここに虫封じ参加の親子が並びます。
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舞台の横から撮影。横から舞台が見えないように枝葉で覆ってあります。
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14時、施餓鬼供養が始まったようです。
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虫封じの申込みに赤ちゃんのいる家族が次々とやってきました。
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開始予定30分前頃、シートとクッション持参の皆さんは地元の方々のようです。
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鬼来迎上演の流れは以下の通り
15:30 舞台清め
15:40 鬼来迎保存会 深田会長の挨拶
15:50 虫封じ
16:00 大序
16:20 賽の河原
16:40 釜入れ
16:50 死出の山
17:00 閉幕

舞台清め
鐃鉢(ジャランジャランという音がするシンバルみたいなものね)の音とともに幕が開き2人の「塩ふり」登場。舞台四隅に塩をまき、ほんの数分で幕が閉まりました。場内どよめき。
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鬼来迎保存会 深田会長の挨拶
深田氏によると、鬼来迎は800年以上もの歴史をもち、戦時中も中断することなく地元の人々によって演じられてきたため昔のままの姿を留めているとのこと。また、今年は新人一名が初舞台を踏むとのことです。

その他、炎天下で暑さが厳しいため、鎧や面をつけている演者の水分補給のため幕間に待ち時間が生じること、本来は大序の途中で劇を一時中断して行われる虫封じですが、赤ちゃんの健康を考慮して急遽上演の順番を変更して劇の前に行うことを観客に伝えました。
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虫封じ
鬼婆が赤ん坊を抱いて泣かせると疳の虫が治まり健康に育つといわれています。

鬼婆が既にスタンバイ。
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参加赤ちゃんは11名とアナウンスあり。
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優しく抱っこする鬼婆。泣きません。
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ウオーと唸って泣かせてみる。
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一旦泣き止んで鬼婆を見る赤ちゃん。
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期待通りの泣き。
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鬼婆の髪を引っ張ってみる赤ちゃん。場内笑い。
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ウーと唸る鬼婆に泣き。何度も鬼婆を見直して泣いていました。場内大うけ。
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大序
亡者が閻魔大王、倶生神、鬼婆、黒鬼、赤鬼の前で生前の行いを裁かれるものです。

鐃鉢の音とともに幕が開き、真っ赤な閻魔大王登場。中腰なのが恐いです。
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決めポーズ。かかとをストンと鐃鉢ジャランが同時。うなずくように顔を左右に振る。
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たまに大きな動きも。同じ動作を繰り返しながら舞台を歩く。
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中腰でズリズリと後退。決めのポーズをして見得を切って着席。
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アップで見てみましょう。
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次に倶生神登場。インド神話に由来し、生まれた時から人の両肩に乗って善悪の行動を記録する男女一組の神であるとアナウンスで紹介。やはり中腰で登場。決めのポーズも閻魔大王とほぼ同じです。
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もうちょっと別の決めポーズも。
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舞台の左右を移動しながらポーズを決めた後、着席。
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鬼婆(奪衣婆と思われる)登場。閻魔大王と倶生神の前で何かをバラバラーっと撒き、客席に凄みます。
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黒鬼登場。ホッホッホーと奇声をあげながら、藁の輪を持った手を顔の前から横に振るのが決めのポーズ。舞台を飛び跳ねるように移動し、床板を踏みしめポーズを決めます。
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赤鬼登場。黒鬼同様奇声をあげ、舞台を移動しては棒で激しく床板を打ちつけてポーズを決めます。
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亡者登場。激しくうなる鬼たち。包丁を手に亡者を閻魔大王の前に突き出す鬼婆。
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倶生神は亡者の生前の行いを写す鏡を掲げて悪行を暴き閻魔大王に報告。「娑婆国中の大悪人」と裁きが下ると、鬼たちが亡者を連れ去り、幕が閉まります。
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賽の河原
石を積む子供の亡者たちを鬼が責め、地蔵菩薩がそれを救います。

賽の河原、開幕。カンカンカンという鐘の音となむあみだ~ぶつあみだぶつ~一重積んでは父のため~と歌が流れ、子供の亡者がソロソロと登場。舞台を一回りし、賽の河原で石を積む。客席からおひねりが。
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そこへ床を激しく踏みつけながらホッホッホーと鬼が乱入。おまえ達の父母は朝夕悲しみに暮れるばかりで追善供養をする心もない。それらは皆、おまえ達の罪となるのだ。我らを恨むでないぞと言い放ち、亡者を連れ去ろうとします。
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地蔵菩薩登場。亡者を鬼から救い、小さな亡者を担いで退場。
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賽の河原、閉幕。
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釜入れ
亡者を釜茹でにする鬼と鬼婆。

鬼たちと鬼婆が、連れてきた亡者を釜茹でに。
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「茹ったのかー」とほえる鬼。「まだまだー」と鍋をかき回す。
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「茹ったぞー、首でもとって食らおうか」と亡者を連れ去り、閉幕。
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死出の山
死出の山に押し上げられ石で打たれ突き落とされて責められる亡者、それを救う観音菩薩と悔しがる鬼たち。

亡者を責めながら死出の山に登らせる鬼と鬼婆。ジャランジャランと鬼たちのホッホッホーという奇声。
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亡者の前にお膳?何か食べてますね。
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無理やり山を登らせる。
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山の上には黒鬼が亡者を待ち受ける。
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おびえる亡者を石で打ちのめし、突き落としてまた責める。
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観音菩薩登場。亡者の罪を並べ立て自業自得と責める鬼と、たとえ罪人であっても衆生を苦しみから救うのが我等の大悲の万行であり、自らが身代わりになるから亡者を許せという観音菩薩との問答が続く。
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観音菩薩は卒塔婆を立て、亡者を連れ去ります。
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悔しがる鬼。
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鬼は卒塔婆を抜くと「亡き人の今は仏となりにけり、名ばかり残す苔の下露、さては成仏いたせしか」と呟き、床に叩きつけます。
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鬼来迎、これにて閉幕。
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終了直後。境内は観客で一杯です。千葉日報の報道によると観客400名とか。
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17時ちょっと前にはこんな状態まで落ち着きました。
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バス便は無く、自家用車、タクシー、徒歩にて広済寺を後に。
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たくさんの観客を集めた鬼来迎は無事幕を閉じました。水田には稲の穂が垂れ、秋の訪れを告げているようです。
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取材:熊谷風実花

広済寺(Wikipedia) 所在地:千葉県山武郡横芝光町虫生483
横芝光町 鬼来迎(横芝町商工会)

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